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考えてみよう―予防治療をはじめるということ―

監修:富士通クリニック 頭痛外来
五十嵐 久佳 先生

片頭痛を予防する(片頭痛発作を減らし、症状を軽くする)方法があります

日本には片頭痛で悩む人は840万人いると推定され、その74%が生活に支障を感じています1)。中には、仕事や家事や勉強がはかどらなかったり、自分の趣味の時間を楽しめなくなったり、外出することをためらったり、片頭痛によって日常生活に大きな支障を感じている方もいるかもしれません。
しかし、このような「片頭痛ストレス」を抱えながらも、定期的に医療機関を受診している方は全体のわずか2.7%にとどまっています1)。長年、頭痛に悩まされながらも、一人でガマンしている方も少なくなく、片頭痛が理由では会社を休めないという方もいるかもしれません。このように、片頭痛は、症状だけでなく心理的にも負担となりえます。

片頭痛の影響を少なくするために、痛みが起こったときの対処(急性期治療)とともに、痛みの発生を抑えるための「片頭痛予防」が必要な場合があります。その手段として、食事や運動などの生活習慣の改善とともに、お薬による予防法(予防治療)があります。その目的は、片頭痛の痛みの発生を防ぎ、片頭痛による日常生活上の負担の軽減を目指す「片頭痛コントロール」です。これにより、これまで片頭痛ストレスに苦しんできた時間を、本来の「楽しむ時間」にできる可能性があるのです。

ここでは、予防治療、つまり、片頭痛コントロールをはじめることで、自分の生活がどのように変わるのかを考えてみます。

  • 毎日のように頭痛がしますが、その都度お薬を飲むと何とか痛みは治まります。それでも予防治療が必要ですか?
    片頭痛に悩む方には、痛みが出たときに痛み止めのお薬を服用して、その場をしのいでいる方も多いことでしょう。しかし、それだけで片頭痛ストレスの根本的な解決になるとはいえません。片頭痛の発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある患者さんでは、予防治療の検討がすすめられていますので、一度医療機関に相談してみるとよいでしょう。他にも、急性期治療のみでは日常生活に支障がある場合や、急性期治療薬が使用できない場合、長く続く神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛がある場合などにも予防治療を行うことがあります2)
  • 仕事中につらい頭痛が長い時間続くことがあります。予防治療をはじめたら、頭痛による負担を軽くすることができますか?
    予防治療を行うことにより、頭痛の日数が減るとともに、症状の程度が軽減し持続時間が短くなることが多いとされているので2)、仕事や家事、勉強中の頭痛による負担を軽くできる可能性があります。
  • 大事なイベントが控えています。予防治療をはじめたら、急な頭痛に襲われる心配が減りますか?
    予防治療を行うことにより頭痛発作の頻度が減少すれば、それだけ、急な頭痛に対する心配が減ると考えられます。片頭痛患者さんは、急な頭痛発作に対する不安から友達と出かける約束ができなかったり、旅行の計画を立てられなかったりすることも多いのですが、片頭痛コントロールがうまくいけば、楽しみにしていたイベントをありのまま楽しむ時間にできることが増えると思います。
  • 予防治療をはじめたら、すぐに効果が出ますか?
    個人差はありますが、一般的に、効果があるかどうか判断するまでに2~3ヵ月かかるといわれています2)。そのため、開始後すぐに効果が出なくても、自己判断で治療を止めることはせず、医師と相談しながら継続することが重要です。
  • 予防治療はずっと続けないといけませんか?
    予防治療の効果を判断するために、少なくとも2ヵ月は必要とされています。効果があり、有害事象がなければ少なくとも3ヵ月、そのまま続けられそうであれば6~12ヵ月は予防治療を続けます。片頭痛のコントロールが良好になれば予防治療薬をだんだん減らしていき、可能であれば中止することができます2)。お薬によって基準は異なりますので、継続や中止については医師と相談しながら決めるとよいでしょう。
  • 妊娠を希望しているのですが、予防治療を受けられますか?
    現在妊娠している、または妊娠を希望している際は、その旨を医師に相談してください。頭痛の治療薬の中には妊婦さんには使用できないお薬があり2)、お薬の種類を変更する必要があるかもしれません(詳しくは「妊娠中・授乳中の片頭痛治療」を参照)。
  • 予防治療にはどれくらいお金がかかりますか?
    治療にかかる費用は、使用するお薬によって異なります。治療による経済的な負担が心配な場合は医師に相談することをおすすめします。経済的な事情を考慮することも治療を続けるうえで重要です。
  • 1)Sakai F, Igarashi H. Cephalalgia. 1997;17:15-22
  • 2)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院, 2021.