監修:獨協医科大学病院
医療安全推進センター・頭痛センター
辰元 宗人 先生
よく眠れなかったときに片頭痛が起きるあなた。もしかすると不眠や寝不足が片頭痛の誘因になっているかもしれません。
平日が忙しくて睡眠不足のため、休日にいつもより寝すぎて片頭痛が起こるあなた。休日の過眠があなたの片頭痛の誘因になっているかもしれません。
よい睡眠をとるために生活を振り返ったり、あなたにとって最適な睡眠時間を見つけてみませんか。あなたの睡眠を見直して片頭痛をコントロールしていきましょう。
片頭痛は天候の変化やストレス、月経などがきっかけ(誘因)となって起こることがありますが、睡眠の過不足もその一つです1)。どのようなきっかけが誘因となるかは個人差がありますが、寝不足や寝すぎたときに片頭痛が起こると感じているあなた。もしかすると、睡眠の過不足があなたの片頭痛の誘因である可能性があります。
今回の記事では、片頭痛患者さんの睡眠の特徴について、4つの研究からひもといて、解決の糸口を探ります。
片頭痛患者さんと睡眠の関係を調べた韓国の研究があります2)。片頭痛もちの人は、片頭痛のない人よりも不眠である割合が多いことがわかっています。さらにこの調査では片頭痛患者さんを不眠のある人とない人に分けて、どのような違いがあるかを調査しました。その結果、片頭痛患者さんの中でも不眠のある人(水色の棒)のほうが、片頭痛の痛みと日常生活の支障度が大きいということもわかりました(図1)。
また、日本で行われた研究3)では、片頭痛患者さんを前兆のある人とない人に分けて調査が行われました。その結果、前兆のある/なしにかかわらず約半数の人で、睡眠不足がきっかけで片頭痛が起きたことがあるとわかりました。また、片頭痛患者さんの約半数の人が、不眠の問題を抱えていることもわかりました。
このように、不眠の問題があると、片頭痛の症状にも影響が出ることが明らかになっています。
睡眠と片頭痛にどのような関係があるかを調べた研究4)では、53%の患者さんが入眠障害(寝つきが悪い)、61%が中途覚醒(途中で目が覚める)があると答えました。この結果から、片頭痛患者さんの半数以上が睡眠の問題を抱えていることがわかります。
また、この研究では睡眠時間を「6時間以下、6~8時間、8時間超」の3つに分けて片頭痛にどのような差があるか比べたところ、睡眠時間によって症状の強さに差があることがわかりました(図2)。
この結果をみると睡眠が「6~8時間」の人たち(エンジ色の棒)が、最も片頭痛の症状が軽いことがわかります。つまり、睡眠時間は短すぎても長すぎても片頭痛に良くないと考えられます。
睡眠時間と片頭痛の関連性を、さらに調べた研究もあります5)。この研究では女性を対象に、どのようなライフスタイルが片頭痛と関係があるかを調べています。この調査でも、片頭痛がない女性と比べて、片頭痛もちの女性では睡眠時間が6時間未満だったり、8時間以上だったりした人が多いことがわかりました。
また、睡眠時間だけではなく、睡眠をとる時間が決まっていない、途中で何度も目が覚めてしまう、さらに、起きた後に十分に休息できた実感がないと答えた人が多いことも、片頭痛患者さんの特徴として浮かび上がりました。
朝起きたときに、爽快感はありますか?いつもの睡眠時間よりも、短すぎたり長すぎたりすると、片頭痛が起きていませんか?
片頭痛が起きにくい睡眠時間が何時間か、寝ている途中で目が覚めてしまったかどうか、朝起きたときの気分など、睡眠の状態と片頭痛の痛みをよく観察してみましょう。頭痛ダイアリーに毎日の睡眠時間を記録することで見えてくる傾向もあるかもしれません。頭痛ダイアリーをつけていない人は、これをきっかけにはじめてみるのもいいでしょう。
不眠などのトラブルを抱えている方は、一人で悩まずに早めに頭痛専門医に相談することが大切です。そのうえで、自分でできる工夫もいろいろ試してみるといいでしょう。
例えば厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)」の休養・こころの健康のカテゴリの中では、次のような安眠のコツが挙げられています6)。
就寝・起床時間を一定にする/睡眠時間にこだわらない/太陽の光を浴びる/適度の運動をする/自分流のストレス解消法を/寝る前にリラックスタイムを/寝酒はダメ/快適な寝室づくりを
三島和夫.不眠症.厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html (2021年12月閲覧)この中から、あなたが取り入れやすいコツを見つけてみてはいかがでしょうか。
時間のあるときにウォーキングやサイクリングをしたり、すきま時間にヨガをやってみるのもいいでしょう。寝る前はハーブティーを飲んだり、ぬるめのお湯にゆっくりつかることでリラックスできる人もいるでしょう。枕の高さやシーツの生地など、あなただけの心地よい寝具を見つけるのもいいかもしれません。
睡眠の問題と片頭痛の両方で悩んでいるのはあなただけではありません。頭痛専門医に相談しながら、焦らず一緒に片頭痛コントロールに取り組んでいきましょう。
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